白血病について
 
ここでは、白血病やドナー登録に関する解説や、
それらに関する様々なトピックを取り上げていきます。

原発事故後9ヶ月、今考えるべきこと その1

原発事故が発生してもうすぐ9か月になりますが、未だ現地では懸命な復旧活動が続けられています。空気中に拡散している放射性物質の量は、現在では爆発事故当時の百万分の一程度まで低減し、新たに原発から放出される放射性物質による被曝については、心配のないレベルまで低下しています。

現在福島県以外での関心事は食材からの内部被曝の影響と考えられます。この点については次のように考えられたら宜しいでしょう。今食材に関する暫定規制値(主にセシウム-137についての)は500ベクレル/kgとなっています。これは言い換えますと濃度としての規制値です。すなわち、食品としてはもう一つどれだけの量を食べるかということを同時に考えなければなりません。例えば主食として一食当たり沢山食べるお米は、おかずとして少量食べる野菜やキノコなどに比べて、重量として多く摂取してしまいます。今、サンプル検査をして暫定規制値を下回っていれば、市場に流通してしまいますが、仮に全て1キログラムあたり500ベクレルとして計算しますと、やはり主食のお米が一番影響を与えそうです。よって考慮すべきは、メニューをもう一度見直し、例えば1週間にどの位どのようなものを摂っているかを推計し、それからどの程度の量の内部被曝が生じ、それを減らすのにはどうすべきかを検討することです。

また世の中には、産地を伏せてかつ線量の測定をしていない食品が沢山ありますので、色々な産地の色々な種類の食材をバランスよく食べて頂くのが、リスク回避に繋がると考えられます。またそのようにバラエティーに富んだメニューにすることも精神的にプラスになると思います。また陸上の生物に関する被曝状況はよくわかっておりますが、海産物に関しては、汚染の広がりが、陸上ほどよくわかっていません。よって海産物に関しては特に産地に注意する事と、海産物は副食物ですので、それこそバラエティーに富んだいろいろなものを食べることがよいと思います。

特にこの影響を最も受けるのが、成長が活発な小さいお子様や、妊婦さんなので、それらの方はより注意して食品をチェックされることをお薦めします。

少々窮屈なお話でしたが、これがいつまで続くかということにつきましては、今後の原発事故の収束状況や除染事業の進捗状況に依存しますので、何とも予測は難しいところです。ただ、40歳を過ぎた成人の方には殆ど何も起こらないと考えますので、どうぞご安心になって生活して下さい。

原発事故と白血病のリスクについて

本年3月11日の東北関東大震災にともなう津波により、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、大量の放射性物質が現在も放出され続けています。放射線被ばくによる副作用としてがんや白血病になるリスクが増加するということが指摘されていますが、その被ばくの量と具体的なリスクの大きさとの関係について、考えてみましょう。まず被ばくには外部被ばくと内部被ばくがあります。外部被ばくは空気中を漂う、もしくは土壌に積もった放射性物質により身体の外部から受ける被ばくのことです。内部被ばくは放射性物質により汚染された水や食材等の摂取により、放射性物質が体内に入り、体内から被ばくを受けるものです。最近では国の監視が行き届くようになり、内部被ばくは許容限度以下で防ぐことができるようになってきました。

放射線被ばくの有害反応である発がんは、被ばく線量の増加に比例して増加する確率的影響されています。放射線による急性反応が起こる被ばく線量である100mSv(ミリシーベルト)以下の範囲では直線的な関係にならず、よりリスクは低いと考える学説もありますが、ここでは最悪のケースを想定して、低線量でもその比例関係が成り立つとしてリスクを評価してみましょう。

国際放射線防護委員会の勧告によりますと1Svの被ばくにより、生涯で5%の人が発がんするとされています。そのうちおよそ1割の人が白血病になるとされています。現時点で福島県外ではほとんどが0.1μSv/h以下の空間線量率です。よってその環境にずっといることで年間(約9000時間)に1mSvを外部被ばくする計算になります。仮に今後10年間この線量率が続くとすると、10年で10mSvになります。その線量では生涯で1万人に5人の人ががんに10万人に5人の人が、白血病になります。一方白血病の罹患率は2006年では年間で人口10万人当り 5.9人ですので、誤差の中に含まれてしまうことがお分かり頂けると思います。よって福島県以外にお住まいの方は、この状況が続けば、リスクは小さく抑えられると考えてよいと思います。但し福島県内では空間線量率は高く、これらの10倍、100倍の空間線量率の地点があり、それに比例して発がんのリスクも上昇しますので、注意が必要です。

福島県外では白血病になるリスクが十分少ないことがお分かり頂けたと思いますが、次に被ばくをさらに低くする工夫をいくつか挙げてみます。まず、原子炉の爆発が起きた時には大量の放射性物質が放出されます。そして、風に乗って運ばれますので、風下に当たる地域は注意が必要です。また雨が降ると、上空の放射性物質が纏まって落下しますので、地上の線量率は上昇します。特に水たまりの線量率が高いですので、注意が必要です。

以上の様なことをしっかり注意していれば、原発からある程度離れた地域にお住まいの方は、白血病の心配は殆どありません。むしろ過剰に恐れるあまり、社会経済活動が落ち込み、それによって齎される政情不安の方が、甚大な被害を我が国に齎すと考えられます。また国民が受ける原発からの放射線被ばくは全く無益なものですから、このまま速やかに無事終息することを祈っています。

放射線診療科部長 唐澤 克之(からさわ かつゆき)

出身校:東京大学(昭和59年卒)
米国放射線腫瘍学会会員/米国臨床腫瘍学会会員/欧州放射線腫瘍学会会員/
日本医学放射線学会放射線科専門医/第一種放射線取扱主任者/日本放射線腫瘍学会理事・認定医/日本ハイパーサーミア学会評議員・認定医/日本癌治療学会臨床試験登録医/
日本がん治療認定医機構がん治療認定医